偽版画制作の奈良の工房と組んだ贋作扱いの大阪の画商はいくら儲けた?

平山郁夫東山魁夷などの日本画家の巨匠の作品の偽版画が大量に流通し、警視庁が奈良県内の工房等を捜索したことが分かりました。

捜索を受けた工房の経営者は「金に困り刷った」と関与を認めました。

しかし大量に流通してしまった贋作(がん作)は大手百貨店などでも販売されていたとのことです。

警視庁は昨年から著作権法違反の疑いで捜査を開始し、大阪府に住む画商の男性や奈良県の工房などをはじめとする数か所の関係先を家宅捜索しています。

この偽版画、贋作販売に絡んだ工房と画商はいくら儲けていたのか?

事件の概要と被害金額がいくらになるか調べてみました。



偽版画を制作した奈良の工房経営者と事件概要

大阪の画商から頼まれて偽の版画(がん作)を制作していた奈良県にある工房には既に警察の捜査が行われておりメディアでも取材されています。

以下にYouTubeのTBS NEWSチャンネルが工房の業者にインタビューしている動画をアップしていますので、以下に掲載します。

上記の動画はYouTubeのTBS NEWSチャンネル
『巨匠の偽版画大量流通で警視庁捜索、工房側「金に困り刷った」』

警察は贋作とみられる複数の版画を押収しており

  • 奈良の工房経営者によるとおよそ8年前から制作の依頼を引き受けていたようです。
  • この8年間で800枚程の贋作を刷っていたとのことです。
  • そして画商からは1枚1万5000円位で請け負ったようです。

犯行に至った理由は以下の通りです。

「(お金が)少しでもあった方がいいなと思ったから。

悪いことをしたなと思ってますよ。

申し訳ないことをしたなと」

(捜索を受けた工房の経営者)
(TBS NEWS 2月8日(月)からの引用)

「悪いことした。」「申し訳ないことをした。」と思っているなら

「最初からやらないで欲しい」

「8年の間のどこかで辞めて自首して欲しかった」と思いますね。

奈良の工房経営者はいくら儲けていたかを上述した内容から計算すると

15,000円 x 800枚 = 12,000,000円

8年間で1,200万円の儲けを出していたことになりますね

版画にはいろんな技法がありそれによって値段も変わります。

1枚15,000円で作れる偽版画が美術関係者の目を通り抜けていたのは不思議に思いました。

普通にネット販売で購入できる版画と比べると随分制作コストが安いと個人的には感じました。

例えば、ネットで販売されている以下の商品は、複製手法としてシルクスクリーン・岩絵具風仕上げを行っています。
(シルクスクリーンは孔版画(こうはんが)とも呼ばれるもので、木枠に張ったシルク(絹)などの布の織り目を通して絵具を刷っていく技法。
ヒロ・ヤマガタやラッセンなどの作品が有名。
岩絵具と呼ばれる鉱物などを砕いた砂のような粒子を持つ絵具で描かれた質感を再現した複製画)

平山郁夫の複製画一覧(楽天市場)へ

複製画技法には、リトグラフ(石版画)、オフセット(平版印刷)、シルクスクリーン(孔版印刷)、工藝画など様々な手法があります。

複製方法によって大きく値段が変わるのが購入側にとっては大きな悩みどころですね。

大阪府に住む画商の男性と版画を売っていた百貨店とは?

今のところ警視庁がマスコミにリークした捜索先として「大阪府に住む画商の男性」と報道されています。

しかし既に奈良の贋作制作の経営者は警察の取り調べに完落ちするような気がします。
(完落ちは全てを自供した状態。半落ちは一部を自供した状態)

ですので、大阪の画商についても直ぐに判明すると思われます。

がん作の流通が判明した去年以降から警視庁が捜査を始めていたようで、一部の大手百貨店は版画の取り扱いを中止していたようです。

  • 今現在、被害を公表した百貨店は「西武・そごう」。
  • 71点、およそ5,500万円相当の贋作の疑いがある版画を販売していた。
  • がん作と判明した場合は、販売した価格で引き取るとしている。

と報じられています。

正確を期すため「西武・そごう」の公式サイトについて掲載されている内容の一部を以下に抜粋します。

【重要なお知らせ】贋作疑い美術商材の販売について

購入いただいたお客さまにご迷惑をおかけする事態を回避するため、

問題の可能性がある作品をいったんお預かりした上で、

第三者団体による真贋鑑定を実施し贋作と判明した場合には、

作品のお引き取りを提案させていただくことといたします。

西武・そごう公式ページへ

大阪府に住む画商の儲けは?

販売関係者の売上分配は、画家の実績・知名度や作品の人気・価値等によって様々ですし、画家と画商の関係によっても大きく変わります。

また展示会を開く百貨店・ギャラリー等と画商との関係もまた様々です。

この画家、画商、展示会開催者の3者により絵画の販売が行われる場合、その売上分配はケース・バイ・ケースで一律に決まっている訳ではありません。

また、その内訳が公表されることもありません。

よって当記事においては西武・そごうの例から、3者間の力関係が同等として、画商の儲け分を概算してみます。

1枚あたりの版画作品の値段は同一価格(平均価格)として計算していきます。

今回の事件の3者とは

  • 「奈良の贋作製作者」
  • 「大阪の画商」
  • 「西武・そごう」

です。

絵画販売において、3者の場合は売上を3等分するケースが多く見受けられます。

しかし「奈良の贋作製作者」の取り分は贋作1枚15,000円という3者間では一番取り分の少ない取引をしていました。

71枚の贋作の売上は、15,000円 x 71枚 = 1,065,000円

「西武・そごう」の71作品の売上から贋作製作者の売上を引くと

55,000,000円 – 1,065,000円 = 53,935,000円

となります。

この粗利益を「大阪の画商」と「西武・そごう」が50%:50%の山分けをしたとします。

53,935,000円 / 2 = 26,967,500円となります。

この「大阪の画商」は「西武・そごう」に対して贋作である偽版画を本物と思わせ、版画の売買市場の適正な相場価格で販売させました。

そして粗利益を按分していたことになります。

大阪に住む画商と名乗る男は、約2,700万円を詐取していたことになります。

更に「大阪の画商」は「奈良の贋作製作者」に800枚の偽版画の制作を依頼していました。

「西武・そごう」で販売された71枚以外の729枚も他の百貨店やギャラリーで行われた展示会で同等な価格で販売されていたとしたら相当な金額になります。

概算してみると、

26,967,500円 / 71 x 729 = 276,891,655円

つまり約2億7,700万円の売上が追加されることになります。

「西武・そごう」の売上と合算すると総額303,859,155円になります。

3億円を上回る金額となりますから驚きですね。

また、もし「大阪の画商」が自分の画廊を持つなりギャラリーを借りるなりして、直接顧客に販売していた分もあると仮定します。

すると売上金を配分する相手もなく全額が自分の懐に入る訳で、そうなると3億円よりももっと大きな金額を得ていた可能性も否定出来ません。

ただ絵画や版画などの美術品を購入する顧客は自分自身で作品が本物であるかの鑑定が出来る訳ではありません。

ですので「西武・そごう」という百貨店のブランド力を信用して購入していた訳ですね。

有名大手の百貨店の信用度を悪用した著作権法違反及び詐欺行為と言えるかと思います。

偽版画制作の奈良の工房と組んだ贋作を扱う大阪の画商による事件の感想

この事件をニュースで聞いて最初に思ったことは、捜査対象となっている者達が8年間もよく騙せたなということです。

この大阪在住の画商は詐欺師として(犯罪者としては)、相当に賢い人間かもしれません。

ここまで、大企業を騙せ通した手口に世間の関心を呼ぶかもしれません。

また奈良にある版画制作工房の職人の技術レベルが相当高いものであったということも考えられます。

版画制作の技術習得には最低5年~10年はかかるとも言われています。

その技巧を著作権違反とはならない合法的な商取引に活かして欲しかったと思います。

工房会社の職人が金に目が眩んでしまったのは社会的には絶対に許されない行為ですが残念でなりません。

一方で、「西武・そごう」などと並ぶ有名百貨店等で、今のところ被害の公表をしているところはありません。

しかし今後被害にあった企業や団体は被害を公表し、贋作を購入してしまった顧客に真摯な対応を迫られます。

この事件の全容が明かされるには、もう少し時間がかかるかもしれません。

警察の捜査が早く進み、事件が解決されることを願っています。

以上、巨匠と呼ばれる日本画家の偽版画(贋作)事件の経緯と利害金額を概算してみました。

最後までお読み戴き有難うございました。